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  <title>双樹館小話</title>
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  <description>西峰と三和が交代で短編小説を書き、50題に挑戦しているブログです。
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  <lastBuildDate>Fri, 14 May 2010 13:44:08 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>第３話　ピアノの弾き手（上）　　〈作：三和すい〉</title>
    <description>
    <![CDATA[　古い洋館の中にある喫茶店。<br />
　「双樹館」という名前の店のスペースはＬ字型をしている。そういう形に造られたのではなく、長方形の部屋を二つつなげて使っているためだ。<br />
　大きさは、それぞれ二十畳と三十畳。一人で開店準備をするには広すぎる。<br />
（まあ、三人いれば十分だけどね）<br />
　テーブルクロスやメニューの位置を直しながら、柏葉朱美は壁にかけられた時計に目を向けた。古そうな時計の針は十二時二十五分を指している。<br />
　あと五分もすれば、午後の営業開始時間。<br />
　ピアノの曲が流れる店内を、朱美は見渡した。<br />
　きちんと並んだテーブルとイス。汚れのない白いテーブルクロス。<br />
　どのテーブルにもメニューと砂糖壺は置いてあるし、赤い絨毯の上にもゴミは落ちていない。<br />
（よし。何とか間に合ったわね）<br />
　久しぶりにフロアでの開店準備を終え、朱美はホッと胸をなで下ろした。<br />
　朱美の担当はキッチンである。いつもなら調理場で料理の下ごしらえをしているところだが、今日はウェイトレスの如月桃子が昼に出かけたまま戻ってきていないので、朱美が代わりに店で準備をしている。<br />
　朝に比べるとやることは少ないが、短い時間で終わらせなければいけないので、慣れない朱美にとっては苦手な作業だ。今日が日曜日で、学校が休みの小柴鷹生が昼から来ていなければ、おそらく間に合わなかっただろう。<br />
「柊、そっちはどう？」<br />
「大丈夫ですよ」<br />
　カウンターの中で、メガネをかけた青年が短く答える。<br />
　白いシャツに、黒いベストとズボン。そして首元に赤い蝶ネクタイをつけた如月柊の担当はお茶とレジだ。客が来てから準備をしても十分間に合うし、店が始まってすぐに客がやって来ることなど滅多にない。<br />
　そう思った時、カランカラン、と入口のドアベルが鳴った。<br />
　ドタバタと大きい足音とともに、<br />
「朱美さーん。準備中の札、外してきましたよ」<br />
　聞こえてきたアルバイトの鷹生の声に、朱美はわずかに顔をしかめた。<br />
　Ｌ字型の部屋の奥にいるので、外から入ってきた鷹生の姿は見えないが、<br />
「こら！　店の中を走るんじゃないよ」<br />
　朱美はやや声を張り上げた。<br />
　いくら毎日掃除をしているといっても走ればホコリはたつものだし、テーブルの上には小さな花瓶や砂糖壺など置いてある。鷹生の運動神経は悪くない方だが、転んだ拍子にテーブルクロスをつかみ水と砂糖を絨毯にぶちまけた人物が過去にいたので油断は禁物である。<br />
「はーい」<br />
　という返事とともに、アルバイトの鷹生が姿を現した。<br />
　カウンターの中にいる柊と同じく、ウェイター姿の少年はさっと店の中を見回し、<br />
「こっちは終わったみたいですね。後は何やりますか？」<br />
「じゃあ、ピアノを拭いておいて。午前中、そっちの窓を開けてたのよ」<br />
　黒いグランドピアノはホコリが付くと目立つし、置いてあるのは店の入口のすぐ横。店を訪れた客が一番先に目にするのが“ホコリをかぶったピアノ”というのは、スタッフとしては避けたいところである。<br />
「ところで、朱美さんて機械苦手なんですか？」<br />
　乾拭き用のぞうきんを取り出しながら、鷹生が聞いてくる。<br />
「そうでもないけど、どうして？」<br />
「だって、全然ピアノに触ろうとしないじゃないですか」<br />
（……よく見ているわねぇ）<br />
　少しだけ感心しながら、朱美はちらりとピアノに目を向けた。<br />
「機械というより、そのピアノが苦手なのよ」<br />
　誰も触れていないにもかかわらず、なめらかに動く鍵盤。そこから流れ出る曲は、プロの演奏に近い上手さである。<br />
　古い洋館の中にある喫茶店。どこか時が止まったような店の空気に、そっと花を添えるように曲を奏で続けるピアノは、常連客の間でもなかなか好評である。天気や季節、その時の雰囲気に合わせて曲を変えてくれるので、一日中店にいる朱美たちも聞いていて飽きることはない。<br />
　双樹館には、なくてはならない存在のピアノ。<br />
　しかし、朱美とってはあまり近寄りたくない存在だった。なので、拭き掃除は桃子や鷹生に任せっきりだ。朱美はキッチン担当なのでピアノに近づかなくても不自然ではないが、スタッフがアルバイトの鷹生を入れても四人しかいない店である。三ヶ月も働いていれば目に付くのだろう。<br />
「ひょっとして、勝手に演奏してるから苦手なんですか？」<br />
　鷹生は冗談のつもりで言ったのだろう。しかし、<br />
「そうよ」<br />
「…………えっ？」<br />
　朱美がうなずくと、鷹生はピアノを拭いていた手を止めた。ふり返り、朱美の顔をまじまじと見つめる。<br />
「本当ですか？　そりゃあ、俺も最初見た時は驚きましたけど、自動演奏機能が付いているんだから勝手に動くのは当たり前なんじゃ……」<br />
「悪い？」<br />
　ジロリと睨むと、鷹生は慌てて拭き掃除を再開した。<br />
　その様子に、カウンターにもたれかかった朱美は小さくため息をつく。<br />
　今のは完全に八つ当たりだ。<br />
　アレに慣れないのは自分のせいだし、そもそも鷹生には本当のことは何も話していない。どう誤解しようが彼の責任ではない。<br />
「やっぱり、まだダメなんですか」<br />
　カウンターの中から柊が小声で話しかけてくる。朱美も鷹生に聞こえないよう声を落とす。<br />
「当たり前でしょ。慣れろって言う方が無理よ」<br />
「そうですか？　僕はもう気になりませんけど」<br />
「あんたたちと一緒にしないでよ。あんたたちと違って、私はアレが初めてだったんだから」<br />
　とは言っても、<br />
（もう二年、か……）<br />
　あのピアノが来たのは、三人でこの店を始める少し前のこと。あれから、もう二年もの時間がたっている。<br />
（それとも、まだ、なのかしら）<br />
　店の営業には慣れたが、あのピアノに対する苦手意識は変わらない。<br />
　理解が追いつかないのか、理解することを頭が拒んでいるのか。<br />
　掃除する鷹生の後ろ姿を眺めながら、朱美はこの店にピアノが来た日のことを思い出していた。<br />
<br />
<br />
　　　　　◆　　　　　◆　　　　　◆<br />
<br />
<br />
　その日、朱美は柊と一緒に買い物に出かけていた。<br />
　買い出しは、キッチン担当である朱美の仕事だ。食材を自分の目で確かめたいのもあるが、桃子に行かせると余計な物を買ってくるし、柊は人混みが苦手だと言ってバスや電車に乗らない上にスーパーにさえ入りたがらないのである。<br />
　そこそこ安い店が近所にあるので、時々こうして連れてきては慣れさせようと試みているが、今日も店の中に一歩も入ることなく買い物は終了。一人で買い物に行かせるまでの道のりは、まだまだ遠いようだ。<br />
（まあ、荷物持ちにはいいんだけどね）<br />
　そっとため息をつきながら、朱美は隣を歩く柊にちらりと視線を向ける。<br />
　あまり表情が変わらないので何を考えているのかよくわからないが、こっちが頼む前に荷物を持ってくれるところはありがたい。<br />
（あとは、もう少し話してくれればね……）<br />
　双子の姉である桃子と違い、弟の柊は無口だ。話しかけても短い返事しか返ってこないし、自分から口を開くことも滅多にない。人見知りする性格なのだろうが、これでは先が思いやられる。<br />
（無理もないか。まだ一ヶ月もたってないし）<br />
　この双子と初めて顔を合わせたのは先月のこと。<br />
　喫茶店「双樹館」の経営者として紹介された時だ。<br />
　どうして初対面の相手と一緒に喫茶店をやることになったのかというと、父親から頼まれたからだ。<br />
『今度、奥様の知り合いの子たちが喫茶店を始めるんだ。お前、手伝ってくれないか？』<br />
　「奥様」というのは、父親が執事として仕えている葛城家の女当主のことだ。<br />
　名前は、葛城日向子。歳は確か八十くらいだったはずだ。<br />
　ずっと入院していて、子供たちは全員家を出ている。彼女の夫も亡くなっているので大きな屋敷には誰も住んでおらず、一階の一部を利用して喫茶店を開くことになったらしい。<br />
　どうして朱美に声がかかったのか、理由には心当たりがあった。<br />
　まず一つは、調理師免許を持っていること。<br />
　しかし、これは朱美の家ではめずらしくはない。死んだ母親が葛城家の料理人をしていた影響か、四兄弟うち三人が調理師免許を持っている。<br />
　二つ目の理由は、朱美が失業中だったこと。<br />
　なかなか終わらない不況のせいか、店長の経営手腕が悪かったのか、それとも近所に新しいレストランができたからなのか。朝出勤すると店の入口に「閉店しました」と書かれた紙が張られていた。<br />
　念のため父親に理由を聞いてみると、<br />
『お前とは話が合いそうな気がしたからだよ』<br />
　そんな答えが返ってきた。<br />
（…………どこがよっ！）<br />
　今思えばとんだ見込み違いである。<br />
　話しかけてくる桃子とは会話がうまくかみ合わないし、柊とは話をすることすらマレである。<br />
　父親が自分に声をかけたのは、おそらく朱美が末っ子だというのが一番の理由だろう。歳が近ければ話が合うというのは、かなり安易な発想だ。<br />
『変わっているけれど、悪い子たちではないよ』<br />
　父親はそう言っていたが、プライベートで仲良くなれるとは思えなかった。<br />
（特に、こういうことがあるとね）<br />
　足を止めてふり返ると、数メートル後ろで柊が立ち止まっていた。<br />
　睨むように細められた目は、真っ直ぐ前に向けられている。<br />
「どうかしたの？」<br />
　朱美は柊の視線を追うが、これから行こうとしている道の先には特に何もない。<br />
「いえ。何でもありません」<br />
　柊はそう言ったが、くるりと背を向けると来た道を戻り始める。<br />
「ちょ、ちょっと。どこに行くのよ！」<br />
　聞こえているはずなのに、柊は何も言わず足を速めて角を曲がってしまう。そっちの道からも帰ることはできるが、かなりの遠回りである。<br />
　あとは店に帰るだけなので、ここで別れても問題はないが、理由もわからず別々の道で帰るというのも居心地が悪い。<br />
「待ちなさいよ！」<br />
　朱美はあわてて柊の後を追いかける。<br />
　柊は背が高く足も長い。朱美も背は高い方だが、早足で歩かれると追いつくのが大変である。<br />
（まったく、もう！　いったい何なのよ！）<br />
　いきなり立ち止まったり、急に別の道に入ったり、柊の行動はいつも突然だ。何か理由があるのならともかく、それも教えてくれない。<br />
（こんなんで本当に一緒に店をやっていけるのかしら？）<br />
　荷物を抱えなおしながら、朱美は大きなため息をついた。<br />
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    <category>１話～５話</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%EF%BC%91%E8%A9%B1%EF%BD%9E%EF%BC%95%E8%A9%B1/%E7%AC%AC%EF%BC%93%E8%A9%B1%E3%80%80%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%81%AE%E5%BC%BE%E3%81%8D%E6%89%8B%EF%BC%88%E4%B8%8A%EF%BC%89%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%88%E4%BD%9C%EF%BC%9A%E4%B8%89%E5%92%8C%E3%81%99%E3%81%84%E3%80%89</link>
    <pubDate>Mon, 23 Nov 2009 10:43:05 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>拍手のお返事です</title>
    <description>
    <![CDATA[いさなさんへ<br />
<br />
　読んでいただき、ありがとうございます。<br />
　始めたばかりなので、双樹館の雰囲気をつかんでもらえるように細かくいろいろと書いてみました。うまく伝わっているようでよかったです。<br />
　鷹生くんは自分と一番歳が離れているので、考え方には一番気を遣いました。<br />
<br />
　続きは現在少しずつ書き進めています。<br />
　もう少しお待ち下さい。<br />
<br />
<div style="text-align:right">すい</div>]]>
    </description>
    <category>拍手のお返事</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E6%8B%8D%E6%89%8B%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%BF%94%E4%BA%8B/%E6%8B%8D%E6%89%8B%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%BF%94%E4%BA%8B%E3%81%A7%E3%81%99</link>
    <pubDate>Wed, 22 Jul 2009 13:25:36 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第２話　月下の邂逅　　　　　　　　　〈作：西峰〉</title>
    <description>
    <![CDATA[　夜。ふと目を覚まし、窓の外を見上げると、円い月が出ている。<br />
　俺は起き上がると、大きく体を伸ばす。<br />
　背をそらし、特に右側の脚を。<br />
　円い月が、つめたく見ている。今夜もいい月だ。<br />
<br />
　窓の隙間から、そっと外に出る。月が白い光を浴びせてくる。<br />
　このベランダまでが俺の外出範囲だと、家人は信じているようだ。<br />
　俺はひょいと壁の上に飛び乗ると、そのまま歩き出す。壁伝いに隣の家のベランダへ。そこから大きく枝を張った木に飛び移るのは、ちょっとしたスリルがある。<br />
　もちろん、今の俺にとっては、さほど難しい仕事ではないがな。<br />
<br />
　木を伝い降り、塀の上へと到達する。まず、地面までは降りない。<br />
　塀の上を一渡り、決まったコースを一周。見知らぬ顔に遭遇した場合、一仕事しなきゃならないが、まあ大抵の場合問題なくこのチェックは終了する。<br />
　その後は、自由時間だ。陽が昇るまでには、元の寝床へ戻ることにしている。<br />
<br />
　公園に差し掛かったとき、人の声が聞こえてきた。<br />
　高く、低く。<br />
　歌、というやつだろうか？<br />
　俺はそれに誘われるように、物好きにもそこに脚を踏み入れた。<br />
<br />
　正直、いつもは避けて通る公園だった。<br />
　俺の行動範囲の端の方だから土地勘はないし、茂みが多くて見通しが悪い。<br />
　ここをねぐらにしているやつも多いと聞いている。<br />
　いきなり知らないやつと出くわすのは勘弁願いたいところだった。　<br />
<br />
　影に潜み、木々の陰からそっと覗く。<br />
　公園の遊具の真ん中、月の光を浴びて、立っている少女。胸に手を当て、旋律を奏でている。<br />
　ここからは、顔は陰になっていてよく見えなかった。<br />
　突然、その旋律が乱れ、そして止まる。<br />
「誰？」<br />
　こちらを振り向く。<br />
　下手を打ったつもりはなかったが、どうやら見つかってしまったらしい。<br />
　俺は観念して、２、３歩彼女に近づいた。月の光が俺にも降りかかる。<br />
　彼女は息をのみ、目を丸くした。<br />
「ドラ？」<br />
　同居人がつけた名で、俺を呼ぶ。俺の方もその声に覚えがあった。なんの物好きか、最近我が家にやってくるようになった少女だ。<br />
　目的はどうやら俺の同居人らしいが、正直全く理解できない。<br />
「ドラじゃないの？」<br />
　少女は、ゆっくりとこちらに近づいて来ようとする。<br />
　俺はその声に答えて、適当に一声鳴いてやった。<br />
「やっぱり…」<br />
　しゃがみこみ、俺の背をなでる。<br />
　いつもと違う、ゆったりしたグレーのワンピース。すぐに彼女と分からなかったのは、そのせいかもしれない。<br />
「先生、夜は外に出してないって言ってたのになぁ……。どうしてこんなところにいるの？」<br />
　背をなで続けながら、彼女は俺の顔をのぞきこんだ。決して責めている口調ではない。ただ本当に、疑問を口に出したというふうだった。だが、俺にとっては大問題だ。<br />
　もし、彼女から俺の同居人にこのことが漏れたら、俺の夜の楽しみが奪われかねない。<br />
　どうしたものかと思っていると、彼女は俺の目を見つめて、にこっと笑った。<br />
「わかった。先生には秘密ね」<br />
　俺から離れながら立ち上がると、彼女はくるりと回り、また俺を見た。顔の前に、指を一本立てる。<br />
「その代わり、わたしのことも秘密ね。こんな夜中にうろうろしてる悪い子だって分かったら、嫌われちゃうかもしれないもん」<br />
　俺は了承の意味を込めて、一声鳴いた。<br />
　もちろん、彼女をそんなふうには、俺は全然思わなかったが。<br />
<br />
<br />
　それからしばらく、彼女はブランコに座り、かといってそれをこぐわけでもなく、ぶらぶらと足を揺らしていた。<br />
　何かを待っているように、時折顔を上げて辺りを見回す。俺も立ち去りがたく、そんな彼女の様子を見守っていた。<br />
「あ」<br />
　突然、彼女が立ち上がる。俺も辺りを見回した。何も変化はないように見えた、がーー<br />
　視界の端に、動くものが映る。そちらを見つめていると、地面から何かが浮き上がってくるのが見えた。<br />
　それはぼんやり光っているようにも見えるが、回りに光を投げてはいない。目を凝らして、やっと見えるほどのかすかなもの。地面から離れると、小さな球体になり、ゆっくりと昇り始める。<br />
　あんまりじっと見ていたので、それからふと目を離して、俺は飛び上がるほど驚いた。<br />
　それと同じものが、周囲に無数に浮いていたからだ。<br />
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」<br />
　思わず毛を逆立てた俺がおかしかったのか、彼女の声には笑みが混じる。俺は少々気恥ずかしくなり、早くなる鼓動をむりやり押さえつけた。<br />
　そうしている間にも、次々と地面から浮き上がった無数のなにかは、漂いながら天へと昇っていく。<br />
　最初こそ驚いたものの、それはなかなかに幻想的な風景ではあった。<br />
「あれはね、忘れられたもの。封じ込まれたものたち」<br />
　俺に説明するように、あるいは独り言のように、彼女は語り始める。<br />
「表に出されなかった、押し込められた、我慢された、隠された、そういう気持ち。みんなが、心の中に閉じこめたと思っているもの」<br />
「……」<br />
「そういう気持ちは、本当は消えずに、地面に流れて、溜まっていくの。そして、やがて今日みたいに全部天へ消えていく」<br />
　上を見上げる。彼女の言う『気持ち』たちは、ますますその数を増しているようだ。<br />
「って言っても、わたしも理屈は全然分かってないんだけどね。ただそういうものだって、見えるから知っているだけ」<br />
　上へ向けていた視線を、下へと落とす。<br />
「……でも、わたし以外のみんなには、見えてすらいないの。なんでだろうね？」<br />
　俺は何も言えなかった。おそらく、彼女も答えを求めているわけではないのだろう。ただその声音の悲しさだけが、俺の耳に残る。<br />
　しばらく口をつぐんだ後、その余韻をふっきるように、彼女は明るい声を出した。<br />
「でも、今日はわたしひとりじゃないもんね。君が来てくれて嬉しかったよ」<br />
　周囲の風景は、落ち着きを取り戻しつつあるようだ。それらが去るにつれ、暗闇のベールが俺たちを包んでいく。<br />
　ひとつひとつの光は弱いが、あれだけ集まると周囲がだいぶ明るくなっていたことに気づかされた。<br />
　俺は彼女に背を向けると歩き出す。<br />
「おやすみ。またね」<br />
<br />
　彼女のことを思う。<br />
　彼女がこんな夜中にわざわざあの出来事を見に来るのは、なぜなのだろう？<br />
　興味か。見えることの確認か。<br />
　だが、あれらのことを語る彼女の口調からは、何か暖かいものが感じられた。<br />
　彼女は、見守っているのかもしれない。<br />
　誰もが忘れてしまったあの「気持ち」たちが、救われるのを。消えていく瞬間を。<br />
　それは彼女にしかできない、弔いなのだろうと俺は思った。<br />
<br />
　俺は住処に向かって歩きだした。<br />
　月は追って来るだろう。<br />
　そう考えると、ちょっといい気分だった。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009.06.23掲載<br />
使ったお題「23:二人だけの秘密」</div><br />
<br />
【あとがき】<br />
家のパソコンが埋もれていて使えなかったので、途中まで会社で書きました。その後、ポメラを衝動買いし、公園のシーンあたりからはそれで書いています。<br />
せっかく持ち運びできるので、ファミレスで書いてみましたが、やはり人の目が気になるというか、落ち着かないというか…。でももう、書くしかないという状況に持ち込めるのは、私にとっては良いような気がします。<br />
<br />
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　]]>
    </description>
    <category>１話～５話</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%EF%BC%91%E8%A9%B1%EF%BD%9E%EF%BC%95%E8%A9%B1/%E7%AC%AC%EF%BC%92%E8%A9%B1%E3%80%80%E6%9C%88%E4%B8%8B%E3%81%AE%E9%82%82%E9%80%85%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%88%E4%BD%9C%EF%BC%9A%E8%A5%BF%E5%B3%B0%E3%80%89</link>
    <pubDate>Fri, 22 May 2009 09:16:35 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第１話　双樹館（下）　　　　　　　　〈作：三和すい〉</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「鷹生くん。今、手は空いてる？」<br />
　やや抑揚に欠ける青年の声に、鷹生はカウンターをふり返った。<br />
　カウンターの中には誰もいないが、その奥の壁には胸ぐらいの高さのところに長方形の穴が空いている。<br />
　幅八十センチ、高さ四十センチぐらいの穴の向こうは調理室だ。調理室で作られた料理はこの穴を通って店の中に運ばれていて、大正時代にも実際に料理の出し入れをするのに使われていたそうである。<br />
　穴の奥行きは三十センチほどと、皿を置くのにはちょうどいいスペースだ。<br />
　最初は単純に便利だとしか思っていなかった鷹生だが、<br />
『ひょっとして、ここの壁の厚さって三十センチぐらいあるんですか？』<br />
　ふと疑問に思って聞いてみると、『そうよ』とキッチン担当の朱美はあっさりとうなずいた。しかもここだけでなく、建物すべての壁がそのぐらいの厚みがあるそうで、どの窓も中から見ると出窓のような造りになっているのはそのためらしい。<br />
「ちょっと外に行ってきてほしいんだ。姉さんに頼み忘れた物があって」<br />
　と、穴の向こうから顔を覗かせているのは、メガネをかけた青年。<br />
　いつもは店のカウンターの中でお茶を入れたり、レジをやったりしているが、たまに調理室に呼ばれて仕込みの手伝いをしている。<br />
　雑用係の鷹生としては、外に行くことは構わないのだが、<br />
「いいんですか？　こっちに誰もいなくなりますよ」<br />
　チラリと店の一番奥に視線を向ける。<br />
　店の中は静かだが、窓際の席には客が一人いる。いつもなら小柄なウェイトレスが接客してくれるが、あいにくと今は外に出ていてる。<br />
「今いるのって千歳（ちとせ）だけでしょ」<br />
　と言いながら、長い髪をきれいに編み上げた女性が穴の向こうから顔を出す。<br />
　キッチン担当の柏葉朱美だ。<br />
「千歳なら放っておいても平気よ。茶がなくなったら自分で入れられるし」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;そりゃそうですけど」<br />
　今いる着物姿の男性客は、常連の一人だ。<br />
　しかも、朱美の高校時代の同級生で、&ldquo;仙石&rdquo;という名字ではなく下の名前を呼び捨てにするほどの仲なのだが、はっきり言ってその扱いはぞんざいだ。時々店番を頼まれているようで、物を置いてある場所は鷹生よりも詳しいことがある。<br />
「それに今は原稿のネタを考えているみたいだから、当分はあのままよ」<br />
「確か作家さんでしたっけ？」<br />
　前に聞いた男の職業を、鷹生は思い出す。<br />
　一度だけ原稿用紙にすごい勢いで文字を書き込んでいる姿を見たことはあったが、基本的にこの常連客はぼんやりとしていることが多い。今日も頬杖をついたまま、一時間以上窓の外を眺めている。手元のカップは空になっているが、それに気づいた様子もない。<br />
「でも、他の客が来たらどうするんですか？」<br />
　いくら静かな店内とはいえ、隣の調理室で作業していたら気づかないこともある。しかも今日は暖かいので出入り口のドアは開けっ放しだ。扉に付けられたベルも鳴りようがない。<br />
「ピアノの曲が変わるから、すぐにわかるよ」<br />
「そうなんですか？」<br />
　青年の言葉に、鷹生は驚いて入口の近くにあるピアノに目を向けた。自動演奏機能が付いていることにも驚かされたが、まさかセンサーと連動して曲まで変わるとは思ってもみなかった。<br />
　しかし、そういうことなら鷹生がここで店番を続ける必要はない。<br />
　穴から差し出されたザルを受け取りながら、鷹生は朱美に聞いた。<br />
「で、どこで何を採ってくるんですか？」<br />
「シソの葉を十枚と、万能ネギを一束。南側の畑にあるから、よろしく」<br />
「了解」<br />
　元気よく返事をし、鷹生はカウンターに背を向けた。<br />
　&ldquo;外に行く&rdquo;と言っても買い物ではない。広い敷地の中にある畑から収穫してくることをこの店では&ldquo;外に行く&rdquo;と言っているのである。すでに外出しているウェイトレスの行き先も、庭にある菜園だ。<br />
　その菜園には建物の中を通って行くように言われているが、<br />
（それだと遠回りなんだよなぁ&hellip;&hellip;）<br />
　ふり返ると、すでに朱美たちは顔を引っ込めている。調理室で仕込みをしているので窓の外を見ることもないだろう。<br />
　鷹生は開けっ放しになっている店の出入り口から外に出た。<br />
　テラスを通って短い階段を降りると、そこには広い庭が広がっている。<br />
　庭の左側にはバラ園、右側には大きな池、そして正面の道をまっすぐ行けば敷地の外に出る門がある。<br />
　鷹生は、道の右側にある柵の前で一度立ち止まった。辺りを軽く見回して人がいないことを確認すると低い柵をまたいで越え、学校のプールよりも大きな池の淵を歩いていく。ここを通るのが菜園への近道なのだ。<br />
　では、どうして建物の中を通るように言われているのかというと、やはり危ないからだろう。水が濁っていてわかりにくいが、この池は結構深いらしい。<br />
（すぐそばを歩かなきゃ、転んでも落ちないさ）<br />
　と思いながら通り抜けようとしたが、池のほとりにそびえる桜の木の前で、鷹生はふと足を止めた。<br />
　洋館の高さとほとんど変わらないほど大きなこの桜の木が、この洋館――『双樹館』の名前の由来だそうだ。<br />
　周りを見ても、ここまで大きな木はこの桜しかない。<br />
　なのに何故『双樹』なのかというと、理由は池の水にある。<br />
　中の様子がまったくわからないほど濁った水は、周囲の景色を鏡のようにはっきりと映し出している。当然すぐ側にある桜の木も水面にきれいに映っていて、まるで二本があるように見えるのである。<br />
　だから洋館の呼び名が『双樹館』。<br />
　そして、その洋館の中にある喫茶店だから『喫茶　双樹館』。<br />
「なんか、安易なネーミングですね」<br />
　働き始めた頃、店の名前の由来を聞いた鷹生が口にした言葉だ。<br />
　それは他のみんなも思っていたことらしく、誰も反論はしなかった。小柄なウェイトレスも苦笑いを浮かべ、<br />
「いろいろ悩んだんだけど、この名前が一番しっくりするのよね。それに、あたしたち二人も&ldquo;樹&rdquo;だから」<br />
「き？」<br />
「ええ、そうよ」<br />
　首をかしげる鷹生に、ウェイトレスの&ldquo;キサラギ　トウコ&rdquo;は手に持っていた注文票にボールペンを走らせた。そして鷹生の前に差し出す。</p>
<p>　　　如月　桃子<br />
　　　如月　柊</p>
<p>　そこに書かれている文字が何を意味するのか、鷹生にはわからなかった。さすがに「キサラギ」は読めたが、<br />
（モモコとヒイラギ？）<br />
　二つの名前らしき字をじっと眺めていると、ウェイトレスは笑って、<br />
「これ、あたしたちの名前よ」<br />
　自分と双子の弟である&ldquo;キサラギ　シュウ&rdquo;を指さした。<br />
「へぇ。こういう字なんですか」<br />
　自己紹介はとっくに終わっていたが、漢字でどう書くのかを知ったのはこの時が初めてだった。<br />
　&ldquo;桃&rdquo;と&ldquo;柊&rdquo;。<br />
　確かに「二本の木」である。<br />
　キッチン担当の朱美の名字も&ldquo;柏葉&rdquo;と木を表す漢字が使われているので「三本の木」の方がいいようにも思えたが、<br />
「私は、二人を手伝っているだけだからね」<br />
　驚いたことに、この店を経営しているのは最年長の朱美ではなく、鷹生と十歳も違わない桃子と柊なのだった。</p>
<p><br />
　双子の姉弟が経営する『喫茶　双樹館』。<br />
　そのシンボルツリーと言える大きな桜は、今は青々とした葉をしげらせている。<br />
　ひと月ほど前までは薄いピンク色の花が咲き誇り、花にあまり興味のない鷹生でも思わず足を止めて見とれるほどきれいだった。葉が出てからは周囲の緑に埋もれ、気に留めることも少なくなったが、こうして木の真下から見上げると圧倒されるものがある。<br />
（こんな大きな木って、なかなかないもんなぁ）<br />
　さわやかな風に、葉がさわさわと揺れるのを鷹生がぼんやりと眺めていると、<br />
「あら？　どうしたの？」<br />
　ちょうど鷹生が行こうとしていた方向から、小柄な人物が歩いてきた。<br />
　普通に考えればそれは桃子であり、声も間違いなく彼女のものだったのだが、<br />
（&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;誰だ？）<br />
　その姿に、鷹生は一瞬たじろいだ。<br />
　店の中での桃子はいつも着物に袴に白いエプロンだ。色のバリエーションはいくつかあるが、和風のウェイトレス姿は変わらない。<br />
　しかし、桃子が店の外でもそんな格好をしているとは鷹生も思ってはいない。畑に行くのだって汚れるから着替えていても何らおかしくはないのだが&hellip;&hellip;。<br />
「何ですか、その格好？」<br />
　半袖のＴシャツにジーンズにスニーカー。<br />
　そこまでは普通の格好だ。<br />
　やけにつばの広い帽子をかぶっているのも「普通」の範囲内だろう。畑仕事をするのだから軍手をしていても構わない。けれど、<br />
「畑仕事する時の服だけど、変かしら？」<br />
「変ですよ」<br />
　数メートル離れたところで立ち止まった桃子らしき人物に、鷹生は正直に答えた。<br />
　それに対する反応は、よくわからない。<br />
　何しろ目の前にいる人物の頭は、まるでカーテンを付けたように、帽子から垂れ下がった薄い布によって覆われているのである。レースっぽい布なので周りの様子はある程度見えるのだろうが、外からでは表情を窺うことは難しく、遠くからでは誰かを判別することすら難しい。<br />
　そして、布で覆われているのは顔だけではなかった。<br />
　二の腕の中程から手首まで――ちょうどＴシャツの袖口から軍手の間までも、黒い長靴下に両腕を突っ込んだような感じになっている。<br />
　素肌をまったくさらそうとしない格好に鷹生は驚いたが、桃子がさしている白い傘を見てその理由に思い当たった。<br />
（紫外線対策ってやつか）<br />
　休みの日の午前中や昼ぐらいにテレビを見ていると、こういったグッズのＣＭが時々流れている。鷹生の母親や大学生の姉も、夏になると暑いと言いながら長袖のシャツを着て出かけているのだ。同じ女性である桃子も気になるのだろう。<br />
（だからって、こんな格好をしなくてもなぁ&hellip;&hellip;）<br />
　普段のウェイトレス姿が似合っているだけに、少しがっかりする。<br />
　一方、桃子の声からはそんなことを気にしている雰囲気はない。普段と変わらぬ様子で小首をかしげる。<br />
「でも、この時期はこの格好じゃないとダメなのよ。特にここら辺は降りやすいし」<br />
「降る？」<br />
　桃子の言葉に、鷹生は空を見上げた。<br />
　桜の木のすぐ下にいるので視界の大半は木の葉でさえぎられているが、その向こうには雲一つない青空が広がっている。登校する前にテレビで確認した今日の降水確率は、夜までゼロパーセントだったはずだ。<br />
「本当に降るんですか？」<br />
「そうよ。今日みたいに風が強い日は気をつけないと危ないのよ」<br />
「危ない？」<br />
　確かに去年はいきなり豪雨になることも多かったが、それでも数分で青空から雨に変わりはしないだろう。畑仕事に気を取られていたとしても、館まで走って戻ればずぶ濡れにはならないような気がする。それに&hellip;&hellip;<br />
（雨が降るのに紫外線対策って必要なのか？）<br />
　ひょっとして、桃子が「降る」と言っているのは「雨」のことではなく「紫外線」のことなのだろうか。<br />
　それと気になっていることはもう一つある。<br />
　先程から、桃子は少し離れた場所から鷹生と話している。鷹生が木陰にいるのに対し、桃子がいるのは日なた。桜の木が作り出す日陰に入ってこようとしない。紫外線が気になるのなら、木の下に来ればいいのではないか？<br />
　そう鷹生が不思議に思った時だった。<br />
　突然、強い風が吹いた。<br />
　飛んでくる木の葉に、鷹生はとっさに腕で顔をかばいながら目を閉じる。<br />
　頭上の枝葉がザワザワと大きく揺れる。<br />
　吹き付ける風に息苦しさを感じたが、それはわずかな時間だった。<br />
　風はすぐにおさまり、周囲に静けさが戻る。鷹生は恐る恐る目を開けようとした。</p>
<p>　――ポタッ　ポタポタッ</p>
<p>　鷹生の手や腕に、何かが当たった。<br />
　小さくて軽いものが、上から落ちてきたようだ。<br />
（何だ？）<br />
　何気なく腕に目をやり、鷹生は顔を引きつらせた。<br />
　大きさは、三センチほどだろう。細長い体に短い針のような毛を生やした物体がそこにいた。何かの見間違いかと思いたかったが、白いシャツの上でそいつは生き物であることを主張するかのように黒い身をくねらす。<br />
（ま、まさか&hellip;&hellip;）<br />
　嫌な予感が鷹生の頭をよぎった瞬間。<br />
　頭上の桜の木から、小雨のようにパラパラと何かが降ってきた。<br />
　ゆっくりと足元に目を向けると、緑色の芝生の上に、たくさんの小さな黒い物体。<br />
　鷹生は思わず一歩後退り――石でも草でもない何かやわらかいものを踏みつけたような感触を、靴裏に感じたような気がした。<br />
　後で考えてみれば、それは錯覚だったのかもしれないが、<br />
「～～～～～～～～～～～～～～～～～～～っ！」<br />
　言葉にならない声を上げながら、鷹生は全力でその場から逃げ出していた。</p>
<p><br />
　桃子のあの格好が&ldquo;毛虫対策&rdquo;だということに鷹生が気がついたのは、館にたどり着いて一息ついた後、赤く腫れあがった自分の手を目にした時だった。<br />
<br />
&nbsp;</p>
<p style="text-align: right">2009.5.4　掲載</p>
<p style="text-align: right">&nbsp; 使ったお題「１０：桜の木の下で」</p>
<p><br />
&nbsp;</p>
<p><br />
<br />
&nbsp;</p>
<p>【あとがき】<br />
　「桜」と言えば、たいていの人は「薄いピンク色の花」を思い浮かべるはずです。そこをあえて「花を出さない話にしよう」とひねくれて作ったのがこの話です。</p>
<p>　では、花以外で何を思い浮かべるのかというと、私の場合は「毛虫」でした。<br />
　私が通っていた保育園にも桜の木があって、毛虫が発生する時期になると立ち入り禁止の白線が引かれていましたし、小学生の時に友達といつもと違う帰り道を歩いていたら、地面にたくさんの毛虫が転がっている道にうっかり足を踏み入れて慌てて引き返したこともありました。<br />
　最近では、市内に新しくできる道路の並木を桜にしたらどうかという意見に対し、毛虫が発生するので近所の人が大変だという回答が市の公報に載っていたりと、桜と毛虫の関係はとても深いような気がします。</p>
<br>
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    </description>
    <category>１話～５話</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%EF%BC%91%E8%A9%B1%EF%BD%9E%EF%BC%95%E8%A9%B1/%E7%AC%AC%EF%BC%91%E8%A9%B1%E3%80%80%E5%8F%8C%E6%A8%B9%E9%A4%A8%EF%BC%88%E4%B8%8B%EF%BC%89%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%88%E4%BD%9C%EF%BC%9A%E4%B8%89%E5%92%8C%E3%81%99%E3%81%84%E3%80%89</link>
    <pubDate>Mon, 04 May 2009 14:22:14 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>第１話　双樹館（上）　　　　　　　　〈作：三和すい〉</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>「鷹生。お前、まだ部活に入ってないんだって？」<br />
　と聞かれたのは、もうすぐ昼休みが終わろうとしていた時だった。<br />
　聞いてきたのは上森和馬。中学の時のクラスメイトである。<br />
　お互いに「鷹生」「和馬」と名前で呼び合う仲だが、高校に入って別々のクラスになってからはほとんど顔を合わせていなかった。鷹生が自転車通学、和馬がバス通学というのも疎遠になった理由の一つである。<br />
　廊下でちょっと立ち話をすることはあっても、こうしてクラスに訪ねてくるのは珍しい。<br />
　何かあったのかと思いながら、鷹生は素直にうなずいた。<br />
「ああ。バイト始めたしな」<br />
　鷹生の高校は親の同意があればバイトはできるし、部活動は強制ではない。なので、鷹生のように部活に入らずバイトに精を出す生徒は少なくない。けれど、バイトも部活も毎日あるわけではないし、時間をずらして両立させているクラスメイトも鷹生の周りには何人かいる。<br />
　鷹生が部活をしないのは、単に入りたい部がなかったからだった。<br />
「だったら、うちの部に入ってくれないか？　あと一人足りなくてさ」<br />
「あと一人って&hellip;&hellip;ああ、部費の話か」<br />
　鷹生の姉もこの高校に通っていたので、話は少し聞いていた。<br />
　新しい部を立ち上げるには十人以上の部員が必要なこと。しかし、一度部ができれば最後の一人が卒業するまで部は存続すること。ただし、五月末の時点で部員が十人に満たなければ学校から出る部への予算が減らされること。<br />
　五月のゴールデンウィークが過ぎたばかりで、月末までまだ日がありそうに思えるが、すでに一年生のほとんどは部活に入るか帰宅部になるか決めてしまっている。この時期に新しい部員が入ってくる見込みはゼロに等しい。<br />
「頼む！　名前だけでもいいんだ」<br />
　手を合わされ、鷹生は少し考え込む。<br />
　部員が十人もいないのなら活動にそれほど力を入れているわけではないだろう。それに、和馬とは割と趣味が合う方だ。興味が持てそうな部ならバイトがない日ぐらい顔を出してもいいかもしれない。<br />
「まあ、見学して面白そうだったら入ってもいいぞ」<br />
「ホントか？　ホントにいいのか？」<br />
　和馬が顔を輝かせて身を乗り出す。<br />
「けど、合わなかったら名前を貸すだけだからな」<br />
「いいっていいって。それで十分。見学はいつにする？　今日なんてどうだ？」<br />
「悪ぃ。バイトがあるんだ。明日でいいか？」<br />
「もちろん。ここのところ毎日みんな集まってるし&hellip;&hellip;って言っても、ほとんど雑談してばっかだけどな」<br />
　思ったとおり、そう熱心に活動しているわけではなさそうだ。<br />
　苦笑を浮かべながら、鷹生はふと肝心な点を聞いていないことに気づいた。<br />
（そう言えば、和馬って何部だっけ？）<br />
　前に聞いたような気もするが、記憶には残っていない。文化系だったのは間違いなかったはずだが&hellip;&hellip;。<br />
　鷹生は訊ねようとしたが、先に口を開いたのは和馬の方だった。</p>
<p>「ところで鷹生。お前、バイト何やってるんだ？」</p>
<p>「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;鷹生？」<br />
　和馬がわずかに眉を寄せる。それはそうだろう。話の途中で黙り込んだら、誰だって不審に思う。<br />
　さらに和馬が何か言おうとした時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。窓際や廊下でおしゃべりをしていたクラスメイトたちがバタバタと自分の席に戻ってくる。<br />
「じゃあ、明日の放課後な」<br />
　と言い残して和馬も慌てて教室を出て行く。<br />
　その背中を、鷹生は少し後ろめたさを感じながら見送った。</p>
<p><br />
（何のバイト、か&hellip;&hellip;）<br />
　カウンターの上を拭きながら、鷹生は軽くため息をついた。<br />
　『喫茶店の雑用係』<br />
　説明すれば一言で済むことを、鷹生は――家族と担任の先生を除けば――誰にも話していなかった。昼休みのように友達とバイトの話になると、親の知り合いの店で働いていると言ったり話題をそらしたりして、いつも誤魔化している。<br />
　もし学校の近くにある喫茶店で働いていると知られたら、絶対に見に来るだろう。<br />
（そうしたら、この格好を見られるんだよなぁ&hellip;&hellip;）<br />
　白いシャツ。黒いベストに黒いズボン。<br />
　首には赤いネクタイ。<br />
　足に履いているのは黒い革靴。<br />
　&ldquo;ウェイターの服装&rdquo;というのが、鷹生のバイト先――双樹館の制服だった。<br />
　しかも、それっぽい安物ではない。手触りや着心地の良さから、服に詳しくない鷹生でも高いものだとわかる。革靴も「実際に履いた方がいいよ」と一緒に店に買いに行ったので、値札に数字が五つ並んでいたのを目にしていた。<br />
　本格的なウェイターの格好。<br />
　正直に言えば、恥ずかしかった。<br />
　人外の執事が出てくるアニメや池袋を舞台にした小説が好きな姉が見たら、『こすぷれ』とか言って携帯で写真を撮られそうである。<br />
　ファミレスみたいに普通のシャツとズボンとエプロンだけでいいんじゃないかとも思うが、この店ではそれが逆に浮いてしまうのだろう。<br />
　鷹生は、あらためて店の中を見回した。<br />
　店のスペースはL字型。もともとそういう形なのではなく、長方形の部屋を二つ使っているためだ。部屋と部屋をつなぐ大きな扉は常に開け放たれていて、どちらにも落ち着いた赤色の絨毯が敷いてあるので、一つの部屋のようにも見える。だが、本来は別々である証拠に、マントルピース付きの暖炉がそれぞれの部屋に備え付けられていた。<br />
　部屋の広さは、約二十畳と三十畳。<br />
　そこに並んでいるのは、白いクロスがかかったテーブルが十個と木のイスが四十近く。そして、L字のちょうど折れ曲がった部分にあたる場所にはバーのような木製のカウンターが備え付けられている。二部屋合わせて五十畳近くあるのだから、これだけの家具があっても狭くは感じないが、鷹生にはそれほど広いようにも思えなかった。<br />
　働き始めた頃、その疑問を口にすると、<br />
『ああ。それは天井が高いせいよ』<br />
　と教えてくれたのは、キッチン担当の柏葉朱美だ。<br />
　言われてみれば、天井は普通の家よりも高い。ざっと見ても三メートルはありそうだ。<br />
　その真っ白い天井からはシャンデリア――と言うには簡素で小さな明かりがつり下げられている。<br />
　どちらの部屋についている電灯も、広さに比べると少し心許ない大きさだ。しかも、置いてある木製の家具はどれも焦茶色で、壁の下半分も同じような色合いの板で覆われている。濃い色の物が多いこの部屋では、小さな明かりだけでは暗い感じになってしまいそうだが、そうならないのは大きな出窓がいくつもあるからだろう。南に面しているせいもあり、陽があるうちは意外と明るかった。<br />
　そして、店の出入り口近くには大きな黒いピアノがある。<br />
　古そうな見かけによらず自動演奏機能が付いていて、今もゆったりとした曲を奏で続けていた。<br />
　学校や家とは違う、まるで日常から切り離されたような雰囲気に、鷹生は映画かドラマのセットの中にいるような気分になる。<br />
　だが、すべて本物だ。<br />
　ちゃんと喫茶店として営業しているし、この建物自体も大正時代に建てられた本物の洋館なのである。さすがに壁紙や絨毯は張り替えているそうだが、外の風景が少し歪んで見える窓ガラスは大正時代からずっと使われてきたものらしい。<br />
　話を聞いた時はへぇと思ったが、鷹生はいまいち興味は持てなかった。<br />
　やはりこういう古い建物は女性の方が好きらしく、常連客の多くが女性である。古い建物や遺跡が大好きな鷹生の母親も毎週のように来ているらしい。<br />
　鷹生がここでバイトをすることになったのも、半分はその母親のせいだった。</p>
<p><br />
　バイトの面接者と間違えられ、この洋館に引っ張り込まれた一ヶ月半ほど前。<br />
　席の一つに座らされた鷹生の前には、見慣れない形の器具が並べられていた。<br />
「これはキャディスプーン。お茶の葉を量るのに使うスプーンよ。こっちはストレーナー。お茶をカップにそそぐ時に使う茶こしで&hellip;&hellip;」<br />
　どこか楽しそうに説明しているのは、着物に袴にフリル付きの白いエプロンという和装姿のウェイトレス。中学生と間違われそうなほど小柄なこの女性が、鷹生をバイト希望者と思い込んで店に連れてきた張本人である。<br />
「じゃあ、まずは仕事の説明からね」<br />
　と言って、何故か茶葉の種類や道具の説明が始まってから、すでに二十分が経とうとしていた。<br />
　どう断ろうかと考えながらも、「仕事内容や時給の話が先じゃないか、そもそもこっちのことは何も聞かなくていいのか」と面接に違和感を感じていると、カランカランとドアに付けられたベルが鳴った。ウェイトレスがふり返る。<br />
「あ、小柴さん。いらっしゃい」<br />
　自分と同じ名字に、鷹生も店の入口に目を向ける。<br />
　と、そこにいたのは鷹生の母親だった。<br />
「あら、鷹生。こんなところで何しているの？」<br />
　まさか会うとは思っていなかったのだろう。目を丸くして驚く母親に、<br />
「彼、今度ここで働くことになったので、仕事の説明をしているんです」<br />
　和装姿のウェイトレスが笑顔で言った。<br />
　&ldquo;単なる通行人&rdquo;が&ldquo;バイトの面接希望者&rdquo;となり、いつの間にか&ldquo;新人アルバイト&rdquo;に格上げされていることに鷹生は抗議の声を上げようとしたが、<br />
「まあ。バイトしたいって、ここのことだったの？」<br />
　勘違いした母親の言葉によってさえぎられる。<br />
　確かに鷹生は「高校に入ったらバイトをしたい」と何度か口にしていた。<br />
　しかし、それは「どこか」であって「ここ」ではない。普通に考えればわかりそうなものである。<br />
　だが、ウェイトレスの言葉によって母親の思考はあらぬ方向にそれたらしく、<br />
「ここなら、いいわよ」<br />
「&hellip;&hellip;え？」<br />
「ここなら家からも近いし遅くまでやってないし、バイトやってもいいわよ」<br />
　あっさり許してくれた上に、バイトに反対だった父親の説得までしてくれたのだった。<br />
　その結果、鷹生の前には二つの道しか残されていなかった。<br />
　この妙なウェイトレスがいる喫茶店でバイトをするか、それともバイトそのものをあきらめるか。<br />
　丸一日悩んだ末に鷹生は前者を選び、こうして双樹館で働いているのである。<br />
　もっとも心配していたほど変な店ではなかったし、住宅地の中にあるせいか目が回るほど忙しい日もなく、時給もそれほど悪くない。用事があれば休みはあっさりもらえるし、クラスメイトがするバイトの苦労話を耳にすると、本当にこれで金をもらっていいのかと思うくらいだ。<br />
　嫌な点をあげるとすれば、今のところ二つだけ。<br />
　この制服と、学校から近いということである。<br />
　母親には「バイトをしている時間には店に来ない」という約束を取り付けることができたが、友達相手にはそれは無理だ。ここで働いていると言えば絶対見に来るだろう。<br />
　自転車で十分もかからない距離なので、同じ高校の人間が一人くらい来てもおかしくはないのだが、今のところ客の中に知った顔はなかった。<br />
<br />
&nbsp;</p>
<p style="text-align: right">【双樹館（下）に続く】</p>]]>
    </description>
    <category>１話～５話</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%EF%BC%91%E8%A9%B1%EF%BD%9E%EF%BC%95%E8%A9%B1/%E7%AC%AC%EF%BC%91%E8%A9%B1%E3%80%80%E5%8F%8C%E6%A8%B9%E9%A4%A8%EF%BC%88%E4%B8%8A%EF%BC%89%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%80%E3%80%88%E4%BD%9C%EF%BC%9A%E4%B8%89%E5%92%8C%E3%81%99%E3%81%84%E3%80%89</link>
    <pubDate>Mon, 04 May 2009 14:14:51 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">penpopo.blog.shinobi.jp://entry/10</guid>
  </item>
    <item>
    <title>50題一覧</title>
    <description>
    <![CDATA[挑戦する50題の一覧になります。<br />
作品ができましたらリンクする予定。<br />
テーマから話を探したい方はここからどうぞ。<br />
<br />
１：長い夜の過ごし方<br />
２：地図にない国<br />
３：ふりむいてはいけない<br />
４：禊（みそぎ）<br />
５：黒いラブラドール<br />
６：動かない右手<br />
７：もう一度会いたい<br />
８：あかずの間<br />
９：マッチ箱の店<br />
10：桜の木の下で　（「<a href="http://penpopo.blog.shinobi.jp/Entry/10/">双樹館（上・下）」</a>　2009.5.4　三和すい）<br />
<br />
11：思い出せない約束<br />
12：留守電メッセージ<br />
13：ルームナンバー13<br />
14：乗りそこねたバス<br />
15：Ｇ線上のアリア<br />
16：遺書と嘘<br />
17：ゆびきりげんまん<br />
18：レンタルビデオ<br />
19：鳥籠（とりかご）<br />
20：突然の訪問者（「<a href="http://penpopo.blog.shinobi.jp/Entry/14/">ピアノの弾き手（上・下）」</a>　三和すい）　
<br />
21：ヘブンズドア<br />
22：プロフェッショナル<br />
23：二人だけの秘密　（「<a href="http://penpopo.blog.shinobi.jp/Entry/12/">月下の邂逅」</a>　2009.6.23　西峰）<br />
24：タイムカプセル<br />
25：白い柩<br />
26：忘れな草<br />
27：絵の中の風景<br />
28：見知らぬ隣人<br />
29：石になった少女<br />
30：キリンの滑り台がある公園<br />
<br />
31：ポーカーフェイス<br />
32：人形のちぎれた首<br />
33：夜の女王<br />
34：むかしむかし<br />
35：パセリ<br />
36：いつものやつ<br />
37：もう一人の誰か<br />
38：鉄格子の嵌まった窓<br />
39：指輪物語<br />
40：こぼれたミルク<br />
<br />
41：理性と本能の狭間<br />
42：破られた手紙<br />
43：かくれんぼ<br />
44：ドレスと拳銃<br />
45：嵐の山荘<br />
46：つないだ手の温もり<br />
47：双子の犯罪<br />
48：祭りのあと<br />
49：ロイヤルミルクティー<br />
50：真夏の夜の夢<br />
<br />
この50のお題はこちらからお借りしました。&rarr;「<a href="http://www.milmil.cc/user/gekka08/">小説書きさんに50のお題</a>」]]>
    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/50%E9%A1%8C%E4%B8%80%E8%A6%A7</link>
    <pubDate>Sat, 11 Apr 2009 03:36:48 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">penpopo.blog.shinobi.jp://entry/9</guid>
  </item>
    <item>
    <title>物書き屋サイド（担当：西峰）</title>
    <description>
    <![CDATA[◆仙石（せんごく）<br />
30代中頃。物書き。<br />
<br />
◇いつき<br />
女子高生（？）　仙石のところへよく遊びに来る。<br />
<br />
◆陸奥（むつ）<br />
出版社の編集者。仙石の担当。趣味は料理。<br />
<br />
◆ドラ<br />
仙石の飼っている猫。そのうち登場予定。]]>
    </description>
    <category>登場人物紹介</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E7%B4%B9%E4%BB%8B/%E7%89%A9%E6%9B%B8%E3%81%8D%E5%B1%8B%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89%EF%BC%88%E6%8B%85%E5%BD%93%EF%BC%9A%E8%A5%BF%E5%B3%B0%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 06 Apr 2009 15:03:45 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">penpopo.blog.shinobi.jp://entry/8</guid>
  </item>
    <item>
    <title>プロローグ（西峰）</title>
    <description>
    <![CDATA[&nbsp;「こーんにーちはーっ」
<div>　玄関チャイムのピンポンのポンの音も鳴らぬ間に、押した本人は玄関に上がり込んでいる。</div>
<div>「や、いっちゃん、学校は？」</div>
<div>「あ、陸奥さん」</div>
<div>　台所からひょいと顔をのぞかせた陸奥の前で、いつきは足を止め、ぴょこっと頭を下げた。</div>
<div>「仙石先生ならまだ仕事中だよ」</div>
<div>　そう告げると、あからさまに残念そうな表情に変わる。</div>
<div>「〆切、近いんですか？」</div>
<div>「うん。明後日」</div>
<div>　『先生』は物書きを生業としている。基本、作業は夜から深夜にかけて行われ、日中まで机に向かっているのは〆切がだいぶ迫った時だけだ。</div>
<div>　それでも『明後日』なら、今回はまだエンジンがかかるのが早い方かもしれない。</div>
<div>「そんなわけだから、俺は夕食の買い出しに行ってくる。まだしばらくいるようなら留守番よろしく」</div>
<div>　陸奥は買い物袋をぶら下げて、台所から出ていく。</div>
<div>　スーツ姿の長身に、微妙な花がらの買い物袋。</div>
<div>　その後ろ姿を見送るのは何度目かになるが、何度見ても笑いがもれそうになる。</div>
<div>（そもそも、出版社の編集って、そういう仕事だったっけ？）<br />
<br />
&nbsp;「&hellip;&hellip;僕のお目付役はいなくなったかい？」<br />
　陸奥がいなくなって間もなく、居間の扉をそっと開け、男が顔をのぞかせた。眼鏡の奥で視線を左右に走らせる。<br />
「先生！」<br />
　いつきは振り向くと、満面の笑顔で仙石を出迎えた。<br />
　仙石は陸奥がいないのを確認すると、ひょろっとした着流し姿で居間に入ってくる。<br />
「まったくあいつと来たら、食事のために外出する暇さえ僕から奪っていくんだからね」<br />
　おいしい食事を作ってもらっておいてその言い分はないのではないかといつきは思ったが、黙っていた。<br />
「あっ、お茶淹れるねっ」<br />
　台所に小走りに駆け寄りながら、いつきは今見た仙石の姿を思い返す。口端がゆるんでしょうがなくなった。<br />
<br />
&nbsp;「お茶と言えばね」<br />
　いつきの淹れてくれた緑茶を一口すすると、仙石は口を開いた。<br />
「近くに、ちょっと変わった喫茶店があるらしいんだよ」<br />
　いつきは首をかしげた。<br />
「どうしてそんなこと知ってるの？」<br />
　仙石は、近所のあれやこれやに、決して詳しい方ではない。むしろ、自分の用がある店以外は認知していないと言っていい。<br />
「高校時代の同級生に、この前偶然会ってね。その店で働いてるんだって」<br />
「働くって&hellip;&hellip;ウェイトレスとか？」<br />
「いや&hellip;&hellip;作ったりする方らしいけど」<br />
　いつきが知りたかったのはそういうことではなかったが、それ以上その同級生について詳しく聞くのも変かと思い、黙っていた。<br />
「詳しい場所は後で知らせてくれるって。いつさんも一緒に行ってみる？」<br />
　いつきは目をぱちぱちさせた。その後、こくこくと大きくうなずく。<br />
「そのお店、名前はなんて言うの？」<br />
「&hellip;&hellip;なんだっけ？　えーと、双子の姉弟がやってて、木がどうのこうの&hellip;&hellip;ああ、そうだ」<br />
<br />
「『喫茶　双樹館』という名だそうだよ」<br />
&nbsp;</div>
<div style="text-align: right">（2009.04.10制作)</div>
<br />
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    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%EF%BC%88%E8%A5%BF%E5%B3%B0%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Mon, 06 Apr 2009 02:25:48 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>双樹館サイド（担当：三和すい）</title>
    <description>
    <![CDATA[<strong>◇如月 桃子　（きさらぎ　とうこ）<br />
</strong>　双樹館のホールスタッフ（接客・レジ担当）。<br />
　柊の双子の姉。<br />
<br />
<strong>◆如月　柊　（きさらぎ　しゅう）<br />
</strong>　双樹館のホール＆キッチンスタッフ（レジ・お茶担当）<br />
　桃子の双子の弟。<br />
<br />
<strong>◇柏葉　朱美　（かしわば　あけみ）<br />
</strong>　双樹館のキッチンスタッフ（お茶・料理担当）。<br />
　仙石の高校の時の同級生。<br />
<br />
<strong>◆小柴　鷹生（こしば　たかお）<br />
</strong>　双樹館のアルバイト（接客・雑用担当）。<br />
　近くの高校に通う一年生。<br />
<br />]]>
    </description>
    <category>登場人物紹介</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E7%B4%B9%E4%BB%8B/%E5%8F%8C%E6%A8%B9%E9%A4%A8%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89%EF%BC%88%E6%8B%85%E5%BD%93%EF%BC%9A%E4%B8%89%E5%92%8C%E3%81%99%E3%81%84%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sun, 22 Mar 2009 02:53:47 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>プロローグ（三和すい）</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>　大きなケヤキの木が並ぶ遊歩道を、鷹生は一人歩いていた。<br />
　住宅地を抜けて大きな公園まで続くこの道は、散歩コースとしては有名らしく、犬を連れたおじいさんやジョギングウェアを着たおばさんたちと何度もすれ違う。きちんと舗装されているので歩きやすいし、大きな道路から離れていて静かなところもいいのだろう。<br />
　天気が良くて風も暖かいので、今日は絶好の散歩日和だと言えるが、鷹生は散歩でこの道を歩いているわけではなかった。<br />
　この先に、四月から通う高校があるのだ。<br />
　通学には自転車を使うつもりだった。この道は「遊歩道」だが、道幅が広いので自転車に乗ったまま通ることもできる。<br />
　ただ、問題は雨の日だ。<br />
　自転車で十五分ほどの距離は、歩くにはやや遠い。最初はカサをさして自転車に乗ればいいと考えていたが、危ないからやめなさいと母親に反対された上に、「乗るならこれを着なさい」と、近所のショッピングセンターで買ってきた緑色の雨カッパを渡された。<br />
　駅まで自転車で行っている大学生の姉は、<br />
「雨の日のバスって混むし、時間どおりに来ないのよねぇ」<br />
　と言ってえんじ色のカッパを大人しく着ているが、鷹生には抵抗があった。せめて、もう少しマシな色ならとも思うが、選んでくれた母親に他のを買ってくれとは言いにくい。<br />
　それなら歩くかと、試しに家から歩き始めてみたものの、高校までの道のりは想像していたよりも長かった。まだ半分も過ぎていないが、この倍の距離を雨の中往復しなければならないと考えただけで気分が暗くなってくる。<br />
（やっぱり、バスにするかなぁ）<br />
　家からバス停までは少し歩くが、高校の前を通るバスはある。しかし、同じ高校に通う生徒でいっぱいだし、雨の日は途中のバス停では乗車できないほど混んでいる。<br />
　前に一度だけ味わった混雑を思い出し、鷹生はため息をついて空を見上げた。<br />
　遊歩道の両側に並ぶケヤキの木は、電柱ぐらいの高さがある。太い枝は道を覆うように伸び、その向こうには青空が広がっている。<br />
　まだ三月なので芽も出ていないが、五月にでもなれば緑の葉が生い茂るだろう。ひょっとすると、雨が降っても葉に遮られ、カッパを着なくても濡れないかもしれない&hellip;&hellip;。<br />
　そんなことを考えていた時だった。<br />
（ん？）<br />
　右側の景色が今までと違うことに、鷹生は気がついた。<br />
　遊歩道の両脇に並ぶ大きなケヤキの木。その向こうにあるのは普通の住宅地だ。レンガやブロックなど、壁の雰囲気が家ごとにがらりと変わっていた。<br />
　それが今は、葉を茂らせた生け垣がずっと続いていた。ぱっと見た感じでは、かなり先まで続いているようだ。<br />
（何があるんだ？）<br />
　広い敷地にある建物と言うと、学校や病院、図書館や市役所ぐらいしか思いつかないが、そのどれもこの遊歩道沿いにあったような記憶はない。<br />
　少し気になり、鷹生は道の反対側に寄った。生け垣は鷹生の背よりも高かったが、道幅はそれなりにある。生け垣から離れて見上げると、その向こうにある建物の姿が目に入った。<br />
（&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;よ、洋館？）<br />
　石造りの建物に、鷹生はポカンと口を開けた。<br />
　ここは間違いなく日本である。それも住宅地のど真ん中。<br />
　そこに、大きな洋館が建っている。<br />
　鷹生の家の周りにも白い壁や煉瓦を使った西洋風っぽい家は多い。しかし、それとは雰囲気も大きさも明らかに違う。どうやら二階建てで、城やホテルのように大きいわけではないが、古そうなたたずまいは、母親がテレビでよく見ているヨーロッパの風景に出てきそうである。<br />
（何でこんなところに洋館が？）<br />
　と、首をかしげたところで、母親が出かけに言っていたことを思い出した。<br />
『あら、あの遊歩道を歩くの？　だったら母さんも一緒に行くわよ。途中に素敵な喫茶店があってね。散歩の時によく寄るのよ』<br />
　一緒に歩く気にはなれず、さっさと家を出てきたので確かなことはわからないが、母親の趣味を考えると、この洋館がその喫茶店である可能性が強い。もっとも『喫茶店』と言うには大きすぎるような気もするが&hellip;&hellip;。<br />
　とりあえず歩き始めると、先に大きな門が見えてくる。<br />
　門扉は開かれていて、そこから中が見えるんじゃないかと鷹生が足を少し速めた時、二つの人影が門から出てきた。<br />
　一人は、背の高い青年。<br />
　百八十センチはあるだろう。すらりとして足が長く、黒いベストに黒いズボンというバーテンダーのような格好がよく似合っている。<br />
　もう一人は、長い黒髪の女性。<br />
　桜色の着物に小豆色の袴、黒いブーツを履いている。まるで大学の卒業式に出るような格好だが、フリルが付いた白いエプロンを着ている。<br />
　背が低いので高校生くらいかと思ったが、整った顔立ちは大学生の姉よりも少し大人びている。二十代前半といったところだろう。青年も同じような年齢に見える。<br />
　二人は門の前で何か話し合っていた。<br />
　聞くつもりはなかったが、<br />
「姉さん、これ本気で貼るつもり？」<br />
　青年の声が耳に飛び込んできた。ため息混じりの声に、鷹生はちらりと青年の顔に視線を向ける。縁の細いメガネをかけた青年の顔は表情が乏しく、どこか不機嫌そうにも見えた。<br />
　一方、黒髪の女性は輝くような笑顔で青年を見上げる。<br />
「もちろんよ、シュウ。ほら、ちゃんと目立つように貼るのよ」<br />
「はいはい」<br />
　気のない返事をしながら、シュウと呼ばれた青年は、手に丸めて持っていた白い紙を広げた。大きさからすると、細長いポスターらしい。<br />
　何かセールかイベントでもあるのだろうか、と何気なく張り紙に目を向けて&hellip;&hellip;鷹生の足が止まった。<br />
　そこに書かれていたのは、『アルバイト募集』の七文字――のみ。<br />
　時給や勤務時間だけでなく仕事内容どころか連絡先すら書いていない。しかも、白い半紙に大きく筆で書かれているので、洋館の前だとかなり違和感がある。<br />
「こんなんで応募してくる奴、いると思うの？」<br />
　少年の考えを代弁するように、青年が問いかける。<br />
「当たり前よ。世の中インパクトよ！　まずは目立つようにアピールしないとね」<br />
「アピールする方向性が間違っているような気がするけど&hellip;&hellip;だいたい募集してどうするのさ。今だって僕ら三人だけで十分なのに」<br />
「その考えが甘いのよ！　人が増えれば、やれることだって増える。提供できるサービスの幅を広げて客のニーズに応えていかないと、世の中生き残っていけないわよ！」<br />
「そうかな。この前始めた宅配サービスだって誰も利用してないし、結局は経費ばかりかかって赤字になるんじゃないの？」<br />
「やってみなければわからないわよ。それに、ほら。さっそくバイトの面接希望者が来ているわ！」<br />
　くるりとふり返った女性が、真っ直ぐ鷹生を指さした。<br />
「え？」<br />
　慌てて辺りを見回すが、鷹生の他には誰もいない。<br />
　つまり、彼女が&ldquo;面接希望者&rdquo;と言っているのは&hellip;&hellip;<br />
（俺のこと？）<br />
「さあ、行くわよ」<br />
　女性は細い両腕が、鷹生の右腕に絡まる。腕に感じるやわらかい感触と、女性の髪から微かに漂う花の香りに気をとられ、鷹生は引っ張られるまま門の中に入り込む。<br />
　確かに、高校に入ったらバイトをしたいと思っていた。<br />
　しかもここは家からも学校からも近く、場所的には理想に近い。<br />
　――だが、どんな仕事なのか、時給はいくらなのか、そもそもいったい何の店なのかも聞いていないのに面接など受ける気はない。そもそも、ただの通行人を面接希望者と勘違いするような女とは一緒に働きたくない。<br />
　助けを求めて青年に目を向けると、彼は大きくため息をついて言った。<br />
「ごめん。うちの姉さん、話を聞かない人だからあきらめて」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;あきらめられるかっ！」<br />
　腕を振りほどこうとするが、女性の力は予想外に強く、鷹生は洋館に向かってズルズルと引きずられていく。その様子をしばらく見つめていた青年も、二人の後を追って歩き出す。<br />
　静けさを取り戻した門の横には、小さな看板が立っていた。<br />
　そこには、少し丸みを帯びた文字でこう書かれている。　</p>
<p>　『ようこそ　喫茶　双樹館へ』</p>

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    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>http://penpopo.blog.shinobi.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%EF%BC%88%E4%B8%89%E5%92%8C%E3%81%99%E3%81%84%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sun, 22 Mar 2009 02:26:59 GMT</pubDate>
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